コーポレートガバナンスで
企業と経済の成長に向けた
ムーブメントを起こす
日本取締役協会 会長 冨山和彦
Message
コーポレートガバナンスで
企業と経済の成長に向けた
ムーブメントを起こす
日本取締役協会 会長 冨山和彦
Message
会長就任4年目の振り返りとして、当協会(JACD)の会員数は順調に増加、委員会・セミナーなどの開催数も増加し、更に活発な展開を行うことができた。活動重点項目には三点を掲げていた。
まず取締役研修プログラムの充実では、大きくアップデートしたプログラムを継続展開。増加且つ進階した受講者からの高い満足と評価、及びオンデマンド形式への確かな反応も感じ取れた。
次に、指名委員会等設置会社制度の改定に積極的に取り組んだ。25年1月当協会で提言書を取りまとめ法務省に提出、4月から法制審議会会社法制部会で議論が開始された。12月開催第9回部会では、当協会コーポレートガバナンス委員会の正副委員長が参考人として参加。企業経営での実情及び潜在的なリスクや懸念を丁寧に説明、法学者を中心とする委員から賛同を得ることに成功した。山場は越え、将来の会社法改正での実現も見えつつある。
最後に、検討会を設けて会員勧奨に実践的に取り組んだ結果、特に企業会員である正会員加盟にて顕著な成果を得た。25年度末には会員数総計は546名にまで増大している。
その他、一般参加が可能な公開セミナーを3回開催、ガバナンスに関係する声明・提言を2回公表。未上場企業のガバナンスに関する提言書は、より広い領域で大きな反響を獲得した。
金融庁コーポレートガバナンス・コード(CGコード)改訂の有識者会議にも初めて参加して、当協会意見を改定案に反映させた。
これらの活動を通じて、JACDの活動及び意見を広く世の中に示し、関心を醸成することが2025年度に出来たものと認識している。
2026年現在、おかげ様でコーポレートガバナンスは今や人口に膾炙する概念となり、現在、その実質化を巡る方法論についての論争はあるものの、ガバナンスの強化が不要であるかのような議論はほとんど聞こえなくなった。各企業でのコーポレートガバナンス向上への努力が、日本市場全体への信頼・評価の向上へとつながり、海外機関投資家からの資金流入、日本株価の継続的な上昇を呼び起こし、まさに良好な正のスパイラルが形成されつつあると認識している。
そんな状況下JACDでは以下の全体方針案に基づき、中期的に協会活動を展開していく。
「日本取締役協会は、独立した社外取締役が大多数を占めるモニタリング型の取締役会を目指し、経営者の成績を上げて、企業の稼ぐ力をより高めていくことを目指して活動していく。それらを達成することにより、海外を含めた投資家がより企業を後押しして、日本経済を更に成長させる。」
委員会活動、セミナー等の活動を引き続き活発に展開することに加え、2026年度は上記全体方針を具現化するために必要な3つのテーマについて、更なる重点強化を企図している。
第一に、各種取締役研修の更なる活性化と拡大を図る。JACDではコーポレートガバナンス実質化の鍵は何より「担い手」にあると認識している。取締役会の実効性向上には、企業価値を創造できる強い"執行"と、価値を棄損しないよう監視する"監督"との両輪の整備が必要不可欠だと考える。近い将来には、独立社外取締役が取締役会の過半を占め、少数株主を含む総てのシェアホルダーの意見を代表しながら、必要時には果断にCEOの選解任を行うような企業が、我が国で太宗を占めるとJACDは予測する。そのためにも独立取締役が果たすべき役割を常に明確化して、取締役研修を通じて、取締役の実力の更なる底上げ、つまりは良質なガバナンスの基盤作りを支援していく。併せて、取締役会事務局向け研修を新たに整備する。
第二に、ガバナンスに関する能動的な働きかけ及び情報発信に努める。とかく守りだと捉えられがちなガバナンスにて、価値創造・成長の源泉であるというポジティブなメッセージをJACDから発していく。特に本年度は"執行を強くする監督"を目指して協会はその活動を進め、常なるガバナンス向上の重要性を経営者自身に対して喚起していく。
株式会社の機関設計については、監督と執行が分離されたモニタリング型の取締役会を目指していく。我が国会社法で認められた3種類の機関設計のうち、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社が、モニタリング型であるとJACDは認識する。とりわけ3委員会が法定必置であり、人事権を梃子にした経営に対する牽制が最も効き、海外機関投資家からも一番理解を得やすい指名委員会等設置会社を、将来に向けて推奨していく。会社法での指名委員会等設置会社制度の改正を見越しながら、関係省庁・東証とも連携して、ソフトローでの整備を中期的に働きかける。独立取締役候補の人材マーケットの整備や稼ぐ力を強化するガバナンスニーズの高まりの現状を鑑みるに、"プライム市場上場企業は指名委員会等設置会社であることをその要件とする"ことも、もはや現実的な段階に迄、我が国企業のガバナンスは向上しつつあると認識している。
また26年6月予定のCGコードの改訂ともリンクして、自社に最適なガバナンスのありかたを常に自発的に立案・説明することを推奨する。配当と自社株買いによる過度な株主還元から企業が脱却し、積極的に未来投資を行い、日本経済全体を反転成長させる先陣をJACDは切る。
最後に、より強いムーブメントを世の中に巻き起こしていくためにも、同じ志を持つ、良質且つ影響力の強い企業が当協会へ加盟することを促進していく。次なる目標として1,000名の会員数を目指す。従来の人的ネットワークからの企業紹介に加えて、ガバナンスへの関心が高い企業群へ直接的な紹介活動も強化する。エンゲージメントの担い手である機関投資家のJACD加盟も勧奨し、望ましい今後のガバナンスの在り方を一緒になって検討していきたい。
その他、協会活動のトライアル体験のためのオープンセミナーを年間3回開催する。
ガバナンス先進企業に対する表彰制度を継続開催する。新たに表彰式中継を加えた広報・広告活動を通じて、模範となる企業事例を広く世の中に対して紹介していく。
会員向けホームページを新たに構築して、協会活用における会員の利便性を高める。現業に忙殺されがちな社内執行関係者に、協会への積極参画を併せて呼びかけていく。
これらの取り組みを通じて、JACDに加盟することの体感価値を相乗的に高めていく。
本年度も、様々な立場からガバナンスを担われている会員の皆様との議論・交流を通じて、協会活動をより活性化させていきたい。日本企業及び社会全体のガバナンス向上へと、微力ながら当協会は貢献して参ります。
(2026年5月18日 会員総会にて 日本取締役協会 会長 冨山和彦)